日本企業の海外進出と合弁契約

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こんにちはMitchです。2021年2月6日、ミャンマーでのキリンHDの国軍関連企業との合弁契約の解消について以下のツイートをしました。

ミャンマー情勢から目が離せない状況ですが、せっかく合弁会社のトピックが出てきたので、今回は企業が海外現地企業と合弁することを通じて海外進出するする際の注意点について説明していきます。

この投稿を読むとわかること
・日本企業が海外進出する際の形態とそのメリット・デメリット
・合弁会社とは何か
・合弁契約の注意点

目次

日本企業の海外進出形態

以前、海外駐在時に講師としてセミナーを何度かしてきたのですが、その際に作った海外進出に関するセミナースライドから以下の表をもってきました。

大きな分類では、簡単に言えば現地に人を出す直接進出と、現地企業を通じてビジネスを展開する間接進出があります。

厳密には、直接進出のうち、駐在員事務所を設置する方法ではビジネスは通常できない点は留意してください
あくまで駐在員を置き、現地の状況をリサーチするのが目的です。

  メリット デメリット
直接進出
  • 現地で主体性をもってビジネスができる 
  • 駐在員として派遣する人もお金も投入するため、費用がかかる
間接進出
  • 直接進出に比べると費用を抑える場合が多い
  • 事業がうまくいかない場合に撤退しやすい
  • 現地の事業のコントロールが効きにくい

直接進出のメリットは間接進出のデメリット、間接進出のメリットは直接進出のデメリット、といった感じで、おおむね表裏一体のような関係です。

法人設立とM&A

直接進出のうち、現地に法人を存在させる形で進出するのは

「法人設立」と「M&A」(現地企業の買収)

です。

この違いは、思いっきりざっくり言うと、

  • ゼロから始める手間をとるのが法人設立
  • 既存の会社の問題点などがある可能性を含みつつも時間を買うのがM&A

ということで差し支えないです。

ちなみに、各国で、事業分野に応じて外資規制がある場合があり、法人設立でもM&Aの場合でも、そもそも外資が参入できない事業分野とか、外資の最大持分比率が定められている場合があります。

例えば、私が駐在していたインドネシアでは従前「ネガティブリスト」という参入規制の一覧表がありました(近時制定されたオムニバス法でこれが「ポジティブリスト」になる、という説明をしている記事もあります。)。
正式版はインドネシア語版になりますが、JETROが和訳を作成していますのでご参考まで。
投資分野において閉鎖されている事業分野及び条件付きで開放されている事業分野リストに関する大統領規程 2016 年第 44 号添付書類リスト(2016 年ネガティブリスト)

合弁会社(ジョイントベンチャー)

冒頭の記事にあった合弁(会社)は、ジョイントベンチャーともいわれます。
日本企業が現地企業と組んで現地法人を設立し、共同で事業運営をしていく形態です。

現地に人も出しつつ、現地企業のノウハウをも利用するという、いいとこどりといったような方法です。

ただし、良いところばかりではありません。

私が東南アジアに駐在していたころ、事業自体は上手くいっていても、合弁相手の現地企業との関係が悪化してしまい、合弁を解消したいと考えている企業が少なくありませんでした。

また、事業が上手くいっていないので撤退のためにも合弁を解消したい、という企業もありました

合弁契約で手当てできていれば対応もできるのですが、合弁契約締結時の力関係などの理由できちんと盛り込まれなかったなどの経緯で手当てできていないケースもあります。
合弁契約締結時にこうした点は十分に留意する必要があります。

合弁契約作成時の注意点

合弁契約作成時の注意点は、各国の事情や事業分野により異なりますが、一般的には以下のとおりです。ここでは簡単に説明します。

  • 持株⽐率を50対50にすると意思決定ができない事態、いわゆるデッドロックに陥る可能性があるので、持株⽐率を50対50とせざるを得ない場合、デッドロック条項を設けておく必要がある。
  • デッドロックの解消⽅法を規定する。⼀般的には、
    • まずは当事者間の協議
    • 次いで⼀⽅当事者による株式の購⼊(いわゆる「Call Option」の⾏使)、株式の譲渡(いわゆる「Put Option」の⾏使)、及び第三者への譲渡、さらには合弁の解消、というように、デッドロック解決の段階を追って規定する
    • Call Option、Put Option及び第三者への譲渡については譲渡価格の算定⽅法等具体的な⼿続まで規定しておく

おそらく冒頭で紹介したキリンHDの合弁契約については、プットオプションがあることが推知させる内容ですので、さすが、このあたりの手当てはきちんとなされていたのではないかと思われます。

まとめ

海外進出時は様々な形態があり得ます。

海外進出についてアドバイスする専門家に対して、会社のニーズを十分に伝え、合弁を含む、どういった進出形態が適切なのか、しっかり検討する必要があります。

その際、上記が少しでも手掛かりになれば幸いです。

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