海外移住のメリット・デメリット(税務編)【節税目的だけならおすすめしない】

この記事は約6分で読めます。

こんにちはMitchです。日本は他の国に比べて税金が高いとか、出る杭は打たれる空気があり住みにくいといった理由で海外移住をしたいという日本人が増えています。
そこで今回は海外移住のメリット・デメリット、そして私が勧めるかどうかという点について何回かに分けて書いていきます。
今回は税務にフォーカスしてみます。
(この投稿は税務に関する概要をお伝えすることを目的としており、アドバイスをするものではないので、実際に税務面が問題になる場合には税理士等専門家にご相談下さい。)

この投稿を読むメリット
・海外移住の税務に関するメリット・デメリットの概要を掴むことができる

目次

自分の海外生活について

私は2010年7月に渡米してから、2019年5月まで、そのほとんどを海外で生活していて、生活したことがある国は、
✔ アメリカ中西部1年、東部2年 (計3年)
✔ インドネシア (2年)
✔ シンガポール (2年半)
✔ マレーシア (1年)
です。
各地で在留邦人コミュニティには入っていた方です。
この4カ国のうち、移住先として人気となっている国はシンガポールとマレーシアですので、以下ではこの2カ国での生活を念頭に書き進めていきます。
アメリカについては、私はハワイに滞在した経験がないものの、ハワイに移住している方も多いと聞いています。
また、インドネシアでも、私が生活していた首都ジャカルタには現地採用で移住されたという方は相当数いらっしゃいましたが、バリ島に移住されている日本人の方も多いと聞きます。

海外移住の目的

海外移住の目的は人により本当に様々ですが、主に以下の目的で海外移住している人が多い印象です。

1. 節税 (法人税・所得税・住民税)
2. 節税 (相続税)
3. 親子留学
4. 現地企業就職
5. 健康維持(寒暖差が少ない国への移住)

1と2は節税目的という大きな目的は一緒です。
1を目的として移住される方は移住先で事業をされる方、2については事業をされている方もいらっしゃいますが、以下で説明するとおり、事業をされるというよりは、ただ時間が過ぎるのを待っているという方が多いように感じます。この点についてはまた別の機会に説明します。
3は、典型的なケースは、子供をインターナショナルスクールに通わせるために母親も同行するものです。父親は日本で頑張って稼ぎます。
4については、大学の現地OB会などに参加すると、日本での「新卒カード」を使わず、新卒で現地就職される方が増えているように感じます。
5も、特にリタイアされた後、日本の夏の暑さ、冬の寒さを避けて寒暖差のない国に移住するという方もいらっしゃると思います。

上記全て網羅すると長くなるため、今回は税務上のメリット・デメリットについて説明していきます。

海外移住の税務上のメリット

海外移住の税務上のメリット、節税について少し深掘りしてみます。

まず日本の税率を確認してみましょう。

法人税

日本の法人税の税率は、国税庁のウェブサイトによれば、最高で約23%です。
法人税関連については以下の税項目があり、これらをまとめて法人税等とされます。

1. 法人税             (税率 23.4%)
2. 地方法人税     (税率   4.4%)
3. 住民税             (税率 16.3%)
4. 事業税             (税率 0.88%)
5. 地方法人特別税 (税率   2.9%)

法人税等の計算式は省略しますが、実効税率は約30%程度となります。

所得税・住民税

日本の所得税の税率は、国税庁のウェブサイトによれば、最高部分で45%です。

課税所得額 税率と控除額
195万円以下 5%
195万円超 330万円以下 10% 97,500円
330万円超 695万円以下 20% 427,500円
695万円超 900万円以下 23% 636,000円
900万円超 1800万円以下 33% 1,536,000円
1800万円超 4000万円以下 40% 2,796,000円
4000万円超 45% 4,796,000円

控除については個別の事情があるので計算から省くと、課税所得が
200万円の方は所得税は約10万円 (実効税率約5%)
500万円の方は所得税は約57万円 (実効税率約10%)
1000万円の方は所得税は約176万円 (実効税率約18%)
2000万円の方は所得税は約520万円 (実効税率約25%)
ということになります。
課税所得が1000万円を超えてくるとかなり税率も高く重税感があるように感じるのではないかと思います。

なお、上記は所得税のみの計算で、個人についてはこれに個人住民税が加わります。住民税はほぼ均一で10%です。

シンガポール・マレーシアの法人税・所得税

シンガポールの法人税率は17%、マレーシアの法人税率は24%です。

所得税については、シンガポールもマレーシアも累進課税制度を採っており、シンガポールの所得税の最高部分の税率は22%、マレーシアは28%です。

こうしてみると、日本の方が法人税等と所得税ともにシンガポール・マレーシアより高い税率となっており、海外に移住する(日本の非居住者になる)、さらには海外で法人をセットアップして海外に移住する、というのは節税目的としては理にかなっているということになりそうです。

相続税

日本では相続税も累進課税となっており、最高税率は55%です。
マレーシアやシンガポールには相続税の制度がありません。

いわゆる「10年ルール」

マレーシアやシンガポールといった国に富裕層が移住するのは、こうした国々には相続税がなく、また、日本の税法下でいわゆる「10年ルール」の適用を受けるためです。
10年ルールが適用されるのは以下の条件のときのみで、これらの条件を満たさない場合には相続税の支払が必要になる場合があることになります。
以下では亡くなった方と相続される方ともに日本人であることを前提にします。
✔ 亡くなった方が海外在住
✔ 亡くなった方の海外在住期間が10年以上
✔ 相続される方が海外在住
✔ 相続される方の海外在住期間が10年以上
この条件が満たされていない場合、日本国内財産はもちろん、海外財産についても日本で相続税の課税対象になります。

この10年ルール、以前は5年だったものが、2017年3月末に10年になりました。
今後更に期間が伸長するか、このルール自体がなくなる可能性もまったくないとはいえない状況です。

海外移住の税務上のデメリット

海外移住の税務上のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

国外転出時課税

日本では、2015年から国外転出時課税制度が採用されています。
細かい要件がありますが、概要は、2015年7月1日以降に日本国外に転出し非居住者となる場合、この者が1億円以上の資産を所有・保有している場合、資産の含み益が実現されたものと扱って所得税及び復興特別所得税が課税される、というものです。1億円以上の資産を持っている人はそこまで多いとは思えないものの、税務目的で海外移住を考える方は注意すべき制度です。

まとめ

ざっと海外移住の際に税務の面でのメリット・デメリットをお伝えしました。
人間が生活していく中では、税務を含むお金の面だけではなく、生活環境や親しい友人との日常的な付き合いなど、お金の面以外でも重要な要素がもちろんあります。
別の投稿でまた説明したいと思いますが、税務的なメリットを追求するあまり、「こんな生活本当に幸せなの?」と感じる海外在住の方もいらっしゃいます。

実際に海外移住する際には総合的に判断する必要があると感じます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました