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2027年『こどもNISA』開始へ―0歳から600万円まで非課税投資が可能に。ただし経済格差拡大の懸念も

ざっくり言うと

✅ 2027年から、0歳の子ども名義でNISA口座を開設できるように拡充される予定です。
✅ つみたて投資枠のみの利用となり、年間60万円、総額600万円が上限。従来のジュニアNISAより使いやすくなり、12歳から資金を引き出せます。
✅ 親や祖父母が子どもの教育資金や将来の資産形成をサポートできる制度ですが、経済力のある家庭とない家庭での格差が固定化する懸念があります。
✅ 2025年12月に政府・与党の拡充案が発表され、2026年度税制改正大綱に盛り込まれる予定です。

目次

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はじめに

2025年12月9日、日本の資産形成政策に大きな転換をもたらす発表がなされました。
政府・与党が少額投資非課税制度(NISA)の拡充案を決定し、従来は18歳以上のみを対象としていた制度が、新たに0歳から利用可能になることが決定しました。
今回は、この『こどもNISA』拡充案の内容について詳しく説明していきます。

特に注目すべきは、過去のジュニアNISA廃止に至った課題を踏まえ、12歳から資金の引き出しを可能にした点です。
一方で、経済格差の固定化を懸念する声も上がっています。
税務面、家計管理面、社会政策面から、この新制度をどのように理解し、活用していくべきかを検討してみたいと考えています。

新たな「こどもNISA」制度の全体像

政府・与党が最終調整を進める新制度では、現行NISAの「つみたて投資枠」のみを18歳未満に解禁する方向で検討されています。
2026年度税制改正大綱に盛り込まれ、早ければ2027年にも制度が開始される見込みです。

対象年齢と利用可能な範囲

新制度における対象年齢は、従来の18歳以上から、なんと0歳まで引き下げられます。
ただし、利用できる投資枠は「つみたて投資枠」に限定されており、個別株式も含めて幅広く投資できる「成長投資枠」は18歳未満には解禁されません。
つまり、少額から定期的に投資信託を積み立てることが中心となる制度設計です。

年間・生涯の投資上限

こどもNISAの投資上限額は、以下のように設定されています。

年間投資上限は60万円です。
これは成人向けNISAのつみたて投資枠(年間120万円)の半額に相当します。
一方、生涯の非課税投資上限は600万円と定められています。これは成人向けNISAの1,800万円上限の1/3程度に相当します。

対比として、成人向けNISAの現在の枠組みは以下の通りです。
成人は年間360万円までの投資が可能で(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯1,800万円という上限が設けられています。
こどもNISAはこれより大幅に限定的な枠組みとなっています。

「12歳から引き出し可能」―制度設計の大転換

新制度において最も重要な改善点は、引き出し制限に関わるものです。
過去のジュニアNISA制度を振り返る必要があります。

ジュニアNISA廃止の背景―18歳まで引き出せない問題

2016年から2023年まで存在していたジュニアNISAは、「原則として18歳になるまで資金を引き出すことができない」という厳しい制限がありました。
この制限が、制度の利用を大きく制約していたと考えられています。

確かに、長期での資産形成という観点からは、資金を固定化することで複利効果を最大化できるという理論的メリットがあります。
しかし、実際の家計ニーズは異なります。
中学受験や高校入学、大学進学といった教育費の必要時期は、18歳を待たずに到来することが多いのです。
また、予期しない医療費や家計上の緊急事態が発生することもあります。
このため、利用者の制度への需要が想定ほど伸びず、2023年にジュニアNISAは廃止されたという経緯があります。

新制度での改善―子ども同意による12歳引き出し

こうした反省を踏まえて、新制度では「子どもの同意を条件に、12歳以上からは資金を引き出すことができる」という設計に変更されています。
12歳というのは、日本の教育制度上、中学進学前後という重要なタイミングです。
進学に伴う学費やタブレット端末などの教育機器購入費が必要となる時期であり、実務的には非常に合理的な設定だと考えられます。

さらに注目すべき点は、資金の用途が原則として制限されないという点です。
教育費に限定されず、進学資金、留学資金、さらには将来の結婚・新生活資金といった、幅広い目的での利用が想定されています。
これは、制度の柔軟性と実用性を大幅に高めるものです。

親による流用防止メカニズム

一方で、親や祖父母による不当な流用を防ぐために、12歳以降の引き出しには「子ども本人の同意」が条件とされています。
制度の設計思想としては、親が子どもの名義を無断で使って自分の資産を運用したり、運用益を親が独占したりすることを防ごうとしていることが窺えます。

ただし、実務的には懸念も存在します。実際の親子関係の中で、親が子どもに対して「同意しなさい」と心理的圧力をかけることを完全には防ぎきれない可能性があります。
また、税務上、親が子ども名義の資産を実質的に支配していると判断されれば、後年になって贈与税の課税問題に発展する可能性も考えられます。
この点については、今後の運用通知や事例の集積を待つ必要があると考えています。

なぜ年間60万円、総額600万円という上限が設定されたのか

新制度の枠組みに目を向けると、一見すると制限的に見えるかもしれません。しかし、この上限設定の背景には、深い政策的な考慮があると考えられます。

経済格差の固定化を防ぐという政策意図

こどもNISA口座に投じられる資金の実質的な出し手は、親や祖父母です。子ども本人が労働所得を得ていない以上、当然のことです。つまり、親の経済力が、そのまま子どもの将来資産に反映される形になりかねません。

年間60万円、総額600万円という上限は、この経済格差の無制限な拡大を抑制するための仕組みだと考えられます。例えば、上限がなければ、経済力のある家庭では毎年数百万円を子ども名義で投資することが可能になり、成人時点で既に数千万円の資産を形成しているという状況も起こり得たでしょう。そうなれば、経済格差は指数関数的に拡大することになります。

600万円上限という設定により、親の支援を受けられる家庭の子どもであっても、将来資産の形成に一定の「上限」を設け、過度な不平等の発生を制度的に抑制しようとしています。このような政策思想は、日本の資産形成政策の中でも革新的な試みだと考えています。

経済格差「固定化」への深い懸念―制度の限界

しかし、新制度に対して、より深い懸念の声も上がっています。政府の発表資料でも記載されているように、「成人した時点で一定の資産を持っている人が出てくるようになり、格差が固定化しかねない」という指摘です。

600万円の上限では完全には防げない問題

確かに600万円という上限は存在しますが、以下のシナリオを考えると、根本的な解決には至っていない可能性があります。

経済的に余裕のある家庭では、0歳から成人までの18年間にわたって、毎年最大60万円を子ども名義で投資することが可能です。
仮に複利効果を考慮しない単純計算であっても、18年×60万円=1,080万円の投資が可能です。
これらの投資から得られた運用益は全て非課税となります。

一方、経済的制約がある家庭では、そもそも余裕資金がなく、子ども名義の投資を行うことができません。
結果として、成人時点で既に資産格差が生まれている状況が発生します。

この格差の固定化は、個々の家庭レベルの問題を超えて、社会全体の流動性を低下させ、世代間での不公正感を醸成する可能性があると考えています。
特に、日本が「格差社会」と指摘されるようになった背景の中で、制度設計の段階から格差が組み込まれてしまうことは、避けるべき事態だという方も多いのではないでしょうか。

世代間資産移転と相続税の関係

さらに複雑な問題として、世代間資産移転の在り方が挙げられます。
現行の相続税制では、子どもへの資産移転に対して相続税が課税されます。
しかし、こどもNISAを活用すれば、親や祖父母から子どもへの非課税資産移転がより容易になるという側面があります。

これは、相続税回避の手段として機能する可能性もあります。
実際のところ、経済力のある家庭では、相続税対策としてこの制度を活用することが予想されます。
一方、相続資産を持たない家庭では、こうした節税メリットを享受できません。結果として、税制面でも経済格差を増幅させる可能性があるということです。

ポジティブな側面―恒久化と非課税期間の無制限化

他方で、新制度にはポジティブな側面もあります。見過ごしてはならない点を整理しておきたいと考えています。

非課税期間の無制限化―長期複利運用のメリット

新制度最大の利点は、つみたて投資枠の非課税期間が「無期限」つまり「恒久化」されることです。
旧ジュニアNISAでは非課税期間が最長5年という制限がありました。
5年を過ぎると、運用益に対して所得税(20.315%)が課税される仕組みでした。

新制度では、この時間的制限がなくなります。
0歳で口座を開設した子どもが成人となる18年後も、さらにその後も、蓄積された運用益は全て非課税のまま保有され続けるということです。
これは、複利効果が限定されず、無限に累積するということを意味します。

例えば、0歳から18年間にわたって毎年60万円を投資し、その後も運用を続ける場合を考えると、20年、30年という単位での長期運用益が完全に非課税となります。
通常の課税口座であれば、毎年の運用益に対して所得税が課税される形になりますが、NISA口座ではそれがありません。
この恩恵は、長期化するほど非常に大きくなります。

教育資金計画の最適化への活用

実務的な視点から見ると、この制度は教育資金計画の最適化に貢献すると考えられます。
特に、複数の子どもを持つ家庭では、以下のような戦略が考えられます。

親自身のNISA枠(年間360万円)、配偶者のNISA枠(年間360万円)、そして各子どもの新こどもNISA枠(それぞれ年間60万円)を組み合わせることで、家族全体としての非課税投資を最大化することができるということです。
祖父母が別途NISA口座を持っていれば、さらに資金を投入することも可能です。

このような家族全体での投資戦略を構築すれば、複数の教育費発生時期に対して、段階的に資金を引き出しながら、残った資産は運用を続けるというアプローチが実現可能になります。

実装スケジュール―2027年開始を目指す

新制度の実装は、以下のタイムラインで進む予定です。

政策決定から施行までの流れ

2025年12月9日に政府・与党の拡充案が発表されました。
その後、2026年度税制改正大綱に制度の詳細が盛り込まれる予定です。
この大綱は、通常、12月末から翌年1月にかけて政府の会議で正式決定されます。

その後、2026年の通常国会で税制改正関連法案が審議され、可決・成立することが見込まれています。
法律が成立した後、細則を定める政令や厚生労働省・財務省の運用通知が作成されます。
このプロセスには数ヶ月を要する可能性があります。

最終的な制度施行は、これらのプロセスを経た後、2027年(早ければ2026年という報道もあります)が見込まれています。
ただし、政策立案過程では細部が変更されたり、施行時期がずれ込んだりする可能性も存在することを念頭に置いておく必要があります。

現時点での確定情報と検討中の項目

確定している主な内容は以下の通りです。

つみたて投資枠のみの対象、0歳から利用可能、年間60万円上限、総額600万円上限、12歳以上は子どもの同意で引き出し可能、非課税期間は無期限―これらはいずれも政府・与党の発表資料で明示されています。

一方、現在も検討中とされている項目もあります。
例えば、具体的な対象商品の範囲(つみたて投資枠にはどの投資信託が該当するのか)、口座開設時の手続き(親権者の同意方法など)、12歳から引き出しの際の具体的手続き―こうした実務的な詳細については、今後の運用通知を待つ必要があります。

実務家として重要だと考えるのは、来年の通常国会の審議状況や財務省の発表する詳細情報をフォローしておくということです。

子育て世代・家計管理の実務的視点から

この新制度は、単なる税制改正に止まらず、家計管理全体の在り方を考え直す機会をもたらしていると考えています。

家族全体での資産形成戦略の構築

親世代としては、親自身と配偶者のNISA、そして子どもたちのこどもNISAを総合的に組み立てることが重要です。

例えば、3人の子どもがいる家庭の場合を想定してみましょう。
親・配偶者で年間720万円(親360万円+配偶者360万円)の非課税投資が可能です。
さらに、3人の子どもがいれば、彼ら彼女らのこどもNISA枠で合わせて年間180万円(60万円×3人)の非課税投資が可能になります。
祖父母が協力すれば、さらに追加資金を投入することも可能です。

このような多層的な投資戦略により、家族全体としての長期資産形成が効率化されることになります。
ただし、こうした戦略を実行するには、親側に相応の知識と計画性が必要であることは言うまでもありません。

教育費の発生時期に合わせた引き出し計画

新たに12歳から引き出しが可能になったという点は、教育費計画と密接に関連しています。

中学受験を予定している家庭であれば、12歳時点での引き出しを視野に入れておくことが合理的です。
高校進学時には15歳前後での引き出しが予想されます。大学進学時には18歳での引き出しが必要となる可能性も高いでしょう。

制度の設計者側も、こうした教育費の発生タイミングを念頭に置いて、12歳という引き出し可能年齢を設定したのだと推察されます。

税務リスクの認識と対応

一方で、税務リスクを軽視してはならないと考えています。

親が子ども名義の口座を開設・管理する際に、実質的には親が資産を支配していると判断されれば、税務当局から贈与税の課税を受ける可能性があります。
特に、親が勝手に引き出して自分の用途に使った場合には、リスクが高まります。

また、将来的に子どもが相続者となる際に、このこどもNISA口座内の資産をどのように扱うかについても、相続税法上の問題が生じる可能性があります。
これらの点については、今後の裁判例や税務当局の指針が明確になるのを待つ必要があると考えています。

まとめ

2027年から開始予定のこどもNISA制度は、日本の資産形成政策における重要なターニングポイントだと考えられます。
過去のジュニアNISA廃止の反省を踏まえ、12歳から引き出し可能という設計の改善は、制度の実用性を大幅に高めています。
また、非課税期間の無期限化により、複利運用のメリットが最大化されることになります。

一方で、経済格差の固定化という懸念は、600万円上限を設けても完全には解決していないと考えられます。
親の経済力によって子どもの将来資産が左右される構図は、制度の導入によってむしろ制度化される可能性さえあります。
この点については、今後の社会的議論が重要になると考えています。

実務的には、親世代は親自身のNISA、配偶者のNISA、そして子どもたちのこどもNISAを総合的に活用した家族全体での資産形成戦略を構築することが重要です。
同時に、税務リスク(贈与税・相続税)への対応を意識しておく必要があります。

2026年度税制改正の国会審議や、その後の運用通知を注視して、制度の詳細が明確になるのを待つ必要があると考えています。

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